楽しいフリをし続けていると楽しいのかもしれない

 2017年ももう残りわずかだ。今年ほど、観劇を趣味にしていて救われた年もないと思うから、年の瀬を前に振り返っておきたい。そしてこれまでの自分の所謂「オタク活動」について、今思い、感じていることを言葉に(ってはてなブログが言ってた)。

 2月。『ALTAR BOYZ』との衝撃的な出会い。TeamGOLDのプレビュー公演は忘れられない。あっという間に貯金はチケットに変わり、寒風吹き荒ぶ新宿歌舞伎町に通った日々は懐かしい。

 3月。『さよならソルシエ』再演に泣いた。円盤化されないことにも泣いている。なぜか今年出会った作品はことごとく映像化が未定で、そのことがブログを綴った要因の一つにもなっている気がする。こぼれ落ちていく記憶を、どうにかして繋ぎ留めたいという思い。

 4月。『髑髏城の七人』Season花。自分が生まれる以前から続いている作品と、こうして出会えた幸運に感謝している。もし7年後に知っていたら、悔やんでも悔やみ切れないだろう。その時ステージアラウンドはもうないのだから。

 

 思えばわたしがTwitterアカウントで交換や譲渡を始めたのは、『うたの☆プリンスさまっ♪』というジャンルにハマっていたからだ。Twitterで譲渡交換、というのは、Twitterアカウントである意味全世界に対してなにかを募集するツイートをし、リプライやDMで諸々お互いの了承が取れると、グッズやチケットを郵送なり手渡しなりでやりとりすることだ。この行為はまったくの非公式なやり方で、素晴らしく気持ちの良い取引(わたしたちはさもそれがビジネス上のものであるかのように振る舞う)の場合も、トンデモ野郎に個人情報を渡してしまうことも、すべては自己責任、である。

 この闇市場のような仕組みを思いついて始めたのは誰なのか知りたいくらいだが、少なくとも4年前くらいにはもう定着していた。その後『仮面ライダー鎧武』『PSYCHO-PASS』など、ジャンルを転々としたわたしは、『幕末Rock』2.5次元舞台作品との出会いを果たした。

 

 人間とは不思議なもので、結局のところスキになれる物事の定量は決まっているようだ。舞台にお金を遣うようになって、自然とアニメグッズからは遠のいた。スキになれる定量は、自分のお財布と連動していると言えなくもないが、正直実生活での恋愛沙汰があった時には舞台もグッズもどうでも良かったので、わたしとしては心のキャパの問題だと考える。

 端的に言えば、自分が現状観劇に費やしている金額は、ある種依存症と言われても仕方のない額だと思う。数ヶ月前からチケットを購入し、絶対に観たい公演なら、仕事だってズル休みする。当日はできるだけ清潔感のある洋服を着ていたいし、応援している俳優さんにはプレゼントだってしたい。観劇の前後には美味しいものを食べたいし、それを写真に撮ってTwitterにアップしたい。とにかく楽しいフリをしたいのだ。毎日の仕事は特に面白いわけでもなく、つい最近片想いは自然消滅したし、自宅に戻れば愛する夫と可愛い我が子がいるわけでもない。いるのはPVCでできた冷たいフィギュアと、ペラペラのブロマイドや塗装が剥がれるアクリルキーホルダーくらいだ。そして誰に向かって楽しいフリをしたいのかといえば、結果的に「自分に向かって」としかいいようがない。これはどのジャンルであろうが、同じようにオタク活動をしていると人たちがよく口にする、この行為は精神安定剤、という言葉に帰結する。スキのキャパは、わたしに必要な精神安定剤の量だ。

 

 最近のオタク女子の典型に漏れず、わたしは『弱虫ペダル』にもハマって、ロードバイクを購入している。ロードバイクに乗っている間は、なぜか「前を向け、遠くを!!」という台詞が頭の中でこだまする。この行為に意味はあるのか、費やした時間とお金はなにをもたらすのか。今のわたしにはわからない。けれど間違いなくこの一年は、劇場に通い、応援している人へ手紙を綴って、客席から拍手をおくるそのひと時が、俯いているわたしを前に向かせ、遠くへと運んでくれたと思う。