超歌劇『幕末Rock』絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)

 

 「音楽的青春」。『幕末Rock』において、作詞作曲を数多く手がけられたテルジヨシザワさんが超歌劇雷舞観劇後につぶやいた言葉だ。そう、まさに超歌劇『幕末Rock』は、わたしの観劇人生において代替の効かない青春だった。

 

 2014年の初演千穐楽天王洲銀河劇場に響いた『生きてゆこう』。その音圧が頬を震わせるようだった『LAST SCREAM』。そして作品を象徴する『五色繚乱』。ゲーム、アニメを受けとめ続けていた自分が、初めて作品内に入り込み、そこの一部となった気がした。初演は千穐楽含め二回観劇したが、生であることはここまで色鮮やかで、変化に富み、そして目が離せないことなのかとつくづく驚かされた。

 続く再演。毎日六本木ブルーシアターに足を運び、初めて舞台作品に「全通」した。客席はいつも満席で、少ししつこくなったアドリブシーンに苦笑しながらも、より結束の増したカンパニーの熱情(パッション)と、周りで一緒に楽しむ贔屓・煌(ファン)の熱情に、もう毎日がお祭りのような気分だった。

 今思えばメインキャストの変更なしに再演なんてことは、舞台公演においては奇跡だった。当時のわたしは観劇というハマりたての娯楽に浮かれ、それこそキャスト変更なんてことは考えたこともなかった。再演の千穐楽、なんの前触れもなく劇中歌を歌い出した客席は、本当に超歌劇で描かれる江戸の民のようで、バカみたいに楽しかったのを覚えている。

 再演千穐楽は自分の誕生日だった。作中にも誕生日が近いキャラクターがいて、早めに誕生日祝いをしようというアドリブまであった。まさか自分の誕生日に、だいすきな作品の千穐楽を観て、さらに「ハッピーバースデー」という単語まで聞けるなんて、もう勝手に運命を感じてしまうほどの経験だった。

 2016年、続編の黒船来航公演が発表された。そしてわたしは、ついに、観劇に時間とお金を遣っている人は誰しもが経験するであろう、キャスト変更という壁にぶつかった。

 

 昨日、超歌劇『幕末Rock』は終わりを迎えた。ファイナルと銘打って上演された雷舞(ライブ)公演。楽しかった。楽しかったが、こうも思った。初演と再演の記憶がない状態で、この絶叫!熱狂!雷舞(クライマックスライブ)を観たかった、と。前述した続編・黒船来航公演からは新たに、ペリー・ジュニアというライバルキャラクターが登場した。わたしはこのキャラクターがだいすきで、だからこそ初演・再演を支え続けたキャストとの絡みがどうしても観たくなってしまった。ファイナルならば新旧のキャストが、なんて、無謀な願いをまた叶えて欲しいとさえ思った。

 黒船来航における客席の空席は、再演の夏を共有した仲間たちが、数多く去っていったような気がして悔しかった。それでもわかってしまうのだ。自分だって、龍馬が良知真次さんでなくなったら、間違いなく超歌劇からは離れたか、足が遠のいたと思う。それは新旧キャストのどちらが良いという話ではない。

 

 キャストが変わっても、『幕末Rock』は『幕末Rock』だった。超歌劇は超歌劇で、それでも、わたしの夢中になった超歌劇『幕末Rock』は、もう終わったのだと思った。2015年に終わったんだ、終わったことを認めたくなかったけれど、もうそれもやめよう。昨日の前楽で『五色繚乱』を聴きながら、ただただその現実を俯瞰で見つめるような気持ちになった。

 

 雷舞千穐楽徳川慶喜を演じられたKIMERUさんが、超歌劇『幕末Rock』と出会ってなにか得たものはあった?と客席に尋ねた。得たものしかなかった。初演で生の舞台から差す光に魅了され、再演で同じキャストの進歌を体感できた。初演長州のいない世界もそれはそれで楽しかったが、再演の『生きてゆこう』を今でも覚えている。昨日の劇場を赤く染めた『LAST SCREAM』、涙が溢れて止まらなかった。青春が終わっても人生は続く。音楽とはなんだ?楽しんでいこうぜ。超歌劇『幕末Rock』という作品に出会えたからこそ、今の自分がある。

超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』公式サイト