ゲキシネ_髑髏城の七人 Season花

 どうしたって人は忘れてしまう。ステージアラウンド東京で『髑髏城の七人 Season花』を観てからもう2年の月日が流れようとしている。WOWOW放送版は何度も観ているが、正直花髑髏の音響は舞台で聞いたそれとは大きくかけ離れていて、だからこそ今回のゲキシネ化への期待は大きかった。映画館の画面に小栗捨之介が大きく映し出された時、わたしは再びあの関東平野に帰ってきたのだと思った。

 正直に言おう。ゲキシネ版は舞台版の30%濃縮還元版だった。まだ記憶に残っている小栗捨之介の晴れやかだがどこか寂しそうな笑顔や、山本蘭兵衛さんの朴念仁だが無界の里に優しく注がれていた視線、そして天を仰いだ成河天魔王の視線の先にあったもの。カメラによって切り取られた視界は、否応なしに世界を切り取った。劇場で垣間観えた小さくもその一挙手一投足でもって感じられた機微は、画面の外へ追いやられている。しかしそれでもなお、映画館に関東平野はあったのだ。

 兵庫のきっかけ出しで降り始める雨。生きようと決めた太夫の声色の変化。兄さが鎌を手に取っただけで、なんであんなにアツい気持ちになれるのか。2年前に夢中になって通った舞台が、そこにもうこれ以上は色褪せないかたちであった。それだけで充分だった、きっと繰り返し観返しては、わたしは記憶の残滓を取り戻す。ゲキシネ花髑髏は、わたしの還元されてしまう前の記憶を呼び覚ます。

 と同時に、自分も沙霧のように前を向かなくてはならないと思う。しのぎを削るエンターテイメント業界の先端を、劇団☆新感線は走り続けている。『偽義経冥界歌』の初日は大阪遠征をした。初見の感想としては、「これは最早メタル髑髏城では!?」と、やはり繰り返し観返すことで、スルメのようにじわじわ日常生活へ侵入して来る楽しさの実感があった。追いかけるしかできないけれど、追いかけるくらいはできるから。劇団☆新感線を応援し続けたい。もう、決めたんだ!!