ミュージカル『刀剣乱舞』三百年の子守唄_2017/03/12昼

後方上手ブロックにて観劇

 

 「手に入れた以上、なくすことはできない」そんな台詞を、荒木宏文さん演じるにっかり青江が言う。積み重ねた時間の分だけ、苦しいことは増える。それは100年も生きはしない人間ですらそうなのだから、刀剣男士たる彼らの痛みは想像もつかない。けれどもしも悲しみと同じかそれ以上に、彼らが喜びを見出せていたら。時間軸の違う存在がともに同じ刹那の時を過ごす、張り裂けそうなほど切なくて、それでいてあたたかい物語だった。

 そもそもの任務の内容や、彼らと周りの人間の間に流れる時の描き方にはいくつも疑問は浮かんだ。だが中盤に流れる一曲はただただ美しい。これまで刀ミュを支えていたヒーローショー的な見せ場やアイドル要素を廃して、純粋なミュージカルとして上演して欲しかった。とはいえ想像上のイラストが生身の人間となる楽しさはやはり健在。トライアル公演から応援し続けて、もう卒業かなと思っている人にこそ、聴いて欲しい子守唄だった。

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