ミュージカル『ラヴズ・レイバーズ・ロスト-恋の骨折り損-』

 「座席にいるのが楽しい」。不思議な感想だが、久し振りにブログを更新したくなった。そもそもシェイクスピアは喜劇よりも悲劇のイメージが強く、それこそ『マクベス』は『メタル・マクベス』の印象が強過ぎた。オーソドックスなシェイクスピア演劇を知らずに「舞台好き」を名乗って良いのか迷うところだが、推しさんが出るから観に行くかと、いつも通りのテンションでチケットを取った。

 

 昨今、観客に対して世間というよりは、興行側の当たりが強くなっている気がする。あくまで個人的な意見で、不愉快に感じられる方もいるだろうと前置きする。けれど多ステできるまま作品を売り出して、売れているものは配慮して譲り合って!!売れていないものは固定客が(後々ばら撒かれる優待やリピチケ特典とかが得られなくても)通って!!という要求が、どれだけ傲慢な要求なのか理解されているのだろうか。はっきり言って、販売システム側でユーザーを認識して、抽選段階でできる限りユニークな数に対して当選権を与えることは可能だろう。少なくともアプリなどを経由して端末依存の電子チケットを持たせるか、アーティストLIVEのように座席位置を当日抽選にして高額転売を防ぐか、果たして最善を尽くしたが最早観客の良心に頼り切るしかない、という状況なのだろうか。

 以前、客層の男女比についてとあるインタビューを読んで落胆したことがある。男性客を連れて行けない女性客でごめんなさい、とすら思った。けれど未だにわからないのは、そこまで男女比にこだわるのなら、券売段階で性別の偏向を加えれば良い話だ。舞台上から見下ろす客席が女ばかりでイヤなら、女性だと申告している人間に当てないようにだってできる。だがそれをせずに売れるまま売って、後から客層に対して要求をするのは卑怯ではないか。男性にも女性にも来て欲しい、初めての人に来て欲しい。そんなこと、作品が男女とも観たくなる内容で、一見さんもチケット取りを頑張れる状況なら、自ずと客層は変わる。その証明を、わたしは『ラヴズ・レイバーズ・ロスト』で震えるような嬉しさとともに実感している。

 

 描かれるのは男女の恋愛模様。なぜシェイクスピアの喜劇を現代化したのかは、BW版を観ればすぐにわかる。シアター・クリエの客席から響く笑い声は時折男性がガハガハ笑う声だったり、女性が共感するような拍手だったり。単純なことだ。客席がどうなるかは、作品がすべてだ。ツイッターでいろいろな方の感想を拝見した。初めてのミュージカルだったけど楽しかった、久しぶりだったけど楽しかった。そしてわたしは、躊躇いもなく観劇にはお金を費やす人間だけれど、いろいろなお客さんと一緒に笑える舞台は楽しかった。

 推しさんの扱いには少し驚かされもした作品だが、こうして誰もが楽しめるエンターテイメント、シェイクスピア作品が称賛されがちな「普遍性」を改めて感じられた。みんなで楽しめるということは、それだけで正義だ。

 

(ちなみにLLLに関してもリピーターチケット特典や、学生チケット特典は実施された。本気で座席位置によるチケット価格の細分化を行えば、全体の利益率は上がると思うのだが、このご時世になにがそれを妨害しているのかわからない。。。)